2021年3月10日
2021年1月26日に公開させていただきましたブログ「QASHアップデート情報 (2021年1月) 」についてはご覧いただけましたでしょうか?
その中でLiquid 分散台帳 (Liquid Distributed Ledger) の話にも少し触れましたが、今回はそれについてもう少し詳しくお話させていただきます。
私たちは “Liquid 分散台帳” を長らく “LDL” と呼称してきましたが、この度メインネットのローンチを控え、正式に「Liquid Chain (リキッド チェーン) 」と名付けることにしました。
Liquid Chainは、Liquidが次世代の金融サービスエコシステムやFinance 2.0の開発を支援するために長年取り組んできた、最も野心的なプロジェクトです。
柔軟性とモジュール化を提供し、幅広いプログラミング言語で開発されたアプリケーションを実行でき、Proof-of-Work (プルーフ・オブ・ワーク - PoW) やProof-of-Stake (プルーフ・オブ・ステーク - PoS) といったあらゆるタイプのコンセンサスエンジンと互換性のある、新しいタイプの企業向けのブロックチェーンとなります。
ブロックチェーンが抱える課題
一般的なブロックチェーンは2つの主要な構成要素から成り立っています。
1つ目はデータがある状態から次の状態にどのように変化するかを指示するステートマシンで、2つ目は合意に達するためのコンセンサスエンジンです。
2009年に、ビットコインはトランザクションベースのステートマシンとPoWでブロックチェーンブームを巻き起こしました。
6年後、同じPoWを使用して大幅に改善されたステートマシンを備えたイーサリアムが誕生し、広範なエコシステムを備えた使いやすいスマートコントラクトプラットフォームを提供する最初のブロックチェーンになりました。
イーサリアムは素晴らしいエコシステムを持っていますが、一方で、いくつか課題も残っています。
数年経ちましたが、未だイーサリアムで開発されたアプリケーションの数は、市場にある膨大な非ブロックチェーンアプリケーションと比較して非常に少ない状態です。
イーサリアムの専用プログラミング言語であるSolidityの習得コスト、適切な使用可能なツールの不足、ネットワーク速度の低下、また特にネットワークが混雑している場合のガス料金などに起因する深刻なスケーラビリティの問題があるのではないかと考えてます。
Liquid Chain - Liquid 分散台帳 (Liquid Distributed Ledger)
私たちは時間をかけて他のブロックチェーンを分析し、金融業界や一般のアプリケーションにとっての利点と欠点を研究しました。
そして、業界にとって本当に必要な技術と機能を提供するために、「全世界での最高品質」となる新しい分散台帳「Liquid Chain」を構築しています。
効率的で安全なモジュール式のブロックチェーン、そして重要なのは、より多くの潜在的な開発者がアクセスできることです。
開発者だけでなく、個人、企業、様々なユーザーがこの新しい分散台帳に価値を見出すと信じています。
Liquid Chainではモジュール化を提供する新しい種類のブロックチェーンを導入しています。
これは、幅広いプログラミング言語で開発されたアプリケーションを実行でき、PoWまたはPoSを初めとするあらゆるタイプのコンセンサスエンジンと相互運用できることを意味します。
独創的なステートマシン
Liquid Chainのステートマシンのユニークな点は、その仮想マシン、つまりスマートコントラクト実行ユニットが、汎用性が高く、高性能で、安全なことです。
それが何を意味するかについてもう少し詳しくご説明します。
汎用性
ブロックチェーンアプリケーション開発の最大の課題の1つは、プログラミング言語の選択です。
イーサリアムが最大のスマートコントラクトブロックチェーンであっても、Solidityの開発エコシステムは未だ非常に小さく、C、C++、Rustなどの一般的なプログラミング言語でよく見られるツールやパフォーマンスチューニングに欠けています。
そこでLiquid ChainではWebAssembly (WASM) を導入しました。WebAssemblyは、開発者がスマートコントラクトをさまざまな言語で構築、およびデプロイできることを意味する他の言語のコンパイル済みターゲットになるように設計された標準のオープン言語です。
“より多くの開発者” は “より多くのアプリ” と “より多くの利用” を意味し、普及の足掛かりとなるでしょう。
高性能
他の独自ブロックチェーンと比較して、実行レイテンシは低くなります。
これは、WebAssemblyがマシンコードと一致するように設計されているため、多くの金融業界のアプリケーションに不可欠な高性能を実現できるためです。
安全性
仮想マシンによって行われた変更は隔離されたサンドボックス環境にのみ影響し、誰もスマートコントラクトを使用してホスト環境を悪用することはできません。
つまり、アプリケーションは内部状態のみを変更でき、制御されたAPIを経由せずにホスト環境に影響を与えることはできません。
テンダーミント (Tendermint) のコンセンサスエンジン
PoWでは原則としてスマートコントラクトの分散型実行も可能にしますが、高性能のスマートコントラクトプラットフォームは低レイテンシのコンセンサスエンジンを伴う場合にのみ意味があります。
コンセンサスエンジンに求められる特性を考えると、テンダーミントが現在利用可能な範囲で最良の選択肢であると考えています。
理由は次のとおりです。
低レイテンシ
テンダーミントのビザンチン・フォールトトレラント性 (Byzantine Fault Tolerance) のPoSアルゴリズムは、わずか1〜3秒のブロック検証を可能にします。
公平性
ラウンドごとに、ブロック・プロポーザーが重み付きラウンドロビンを使用して選択されます。
安全性
悪意のあるバリデータが3分の1未満であれば、ネットワークが危険にさらされることはありません。
分離
コンセンサスは、正しく実行するためにステートマシンの内部知識を必要としません。
絶対的ファイナリティ
ビットコインやイーサリアムのようなPoWコンセンサスアルゴリズムでは、トランザクションのファイナリティは確率的です。
これはトランザクションが元に戻される可能性がわずかにですが存在することを意味します。
このトランザクションを含むブロックがチェーンの奥深くに入ると、この確率は低下します。
これが、これらのネットワークでトランザクションを受け入れる前に6ブロックの承認数が推奨される一般的な理由です。
別の分散型アプリケーションであれば、ファイナリティに関して異なる設定を持つことができます。
ただし確認時間が長いとブロックチェーンで実行される金融アプリケーションの種類が制限される可能性があります。
トレーディングシステムのような時間にシビアな金融アプリケーションでは多くの場合、トランザクションをなるべく早く完了することが求められます。
したがって、1ブロックでの絶対的なファイナリティはコンセンサスアルゴリズムで重要であると私たちが考える特性です。
幸いにも、テンダーミントはビザンチン障害耐性 (Practical Byzantine Fault Tolerance) の実装のおかげでこれを実現しています。
進化し続けるLiquid Chain
テンダーミントがデフォルトのコンセンサスエンジンになりますが、Liquid Chainはコンセンサスエンジンが交換可能であり、システムから切り離すことができるように設計されています。
ステートマシンは、アプリケーション・ブロックチェーン・インターフェイス(Application BlockChain Interface - ABCI) を介してテンダーミントのコンセンサスエンジンと対話します。
これにより、コンセンサスエンジン部分の将来の機能強化が可能になり、意欲的な開発者はLiquid Chainのステートマシン上で他のコンセンサスモデルを試すことができます。
ムーアの法則が予測したのと同様に、マイクロチップ上のトランジスタの数は約2年ごとに倍増し、コンセンサスエンジンも急速に進化しています。
世の中の需要と要件が増加するにつれて、より新しく、より有力なエンジンが市場に継続的にリリースされています。
このため私たちはコンセンサスエンジンをモジュール化し、スマートコントラクトプラットフォームから切り離すことの重要性を確信しています。
手数料モデル
ネイティブ資産
他のブロックチェーンとは異なり、Liquid Chainには固有の通貨単位がありません。
Liquid Chain上のすべてのアプリケーションと資産はコントラクトであるため、デフォルト (ネイティブ) の手数料通貨としてコントラクト・トークン、もしくはLiquid トークンを指定します。
コントラクトは、転送、一時停止などのすべてのLiquidトークン機能を管理し、手数料の支払いはこの単一のコントラクトを介して行われます。
これにより、コントラクトをデプロイ、またはアップグレードすることにより、手数料モデルの機能を簡単に追加または変更できる柔軟性が得られます。
トランザクション手数料
すべてのトランザクション手数料はLiquidトークンで計算され、支払われます。
Liquid Chainでは、各トランザクションが少額のトランザクション手数料を支払う必要があるように設計されています。
これは、ネットワークが悪用されたり、DoS攻撃を受けたりしないようにするためです。
このトランザクション手数料はトランザクションの実行時間とネットワークの負荷に応じて増加するため、意図的にネットワークに過負荷をかけることは現実的ではありません。
フェーズ1:償却
最初のフェーズでは、トランザクション手数料はいかなる人、企業にも支払われず、徹底的に償却されます。
フェーズ2:ステーキング
このフェーズでは、トランザクション手数料はバリデーターと呼ばれる特別なネットワークノードによって収集されます。
これらのバリデーターは交代で新しいブロックを提案します。
ブロック・プロポーザーは、そのブロックのトランザクションからすべての手数料を徴収します。
バリデーターが提案する頻度は、その投票力によって異なります。
誰もがLiquid Chainのバリデーターになることができるわけではありません。
通常のユーザーが参加してコンセンサスから利益を得るには、ステーキング
したいLiquidトークンを既存のバリデーターに委託することを選択できます。
ステーキング数量が大きければ大きいほど、バリデーターの投票力は大きくなります。
バリデーターはトランザクション手数料を受け取ると、そのステイカーに再配布できます。
その他、技術的な詳細については、Liquid Chainのテクニカル・ホワイトペーパー (英語版) をご覧ください。
ユースケース
ステーキング・保管 | ノードバリデーターとして報酬を獲得・保管 |
ペイメント | 最小のトランザクションコストで収益を増やす |
レンディング | スマートオンチェーン担保管理を通じた安全なレンディング |
トークン化された担保・資産 | 高性能で可変性のあるスマートコントラクトプラットフォームを介して複合的な金融商品を構築し、細分化された流通を改善します |
カストディ | サードパーティ無しでの預託を可能にし、コストを節約 |
今後の予定
現在Liquid Chainはコード監査を行っています。
監査完了後メインネットのローンチを予定していますので、引き続き進展を見守っていただけますと幸いです。
今後もQASH (Liquidトークン)、そしてLiquid Chainにご期待ください。
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